地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

高級なマットレスを買った【地獄のイラストエッセイ】

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 私が布団で寝ていたのは小学五年生までのことだ。近所のおばちゃんから「不要になったベッドがある」との情報を得た私はおかんに「布団だなんて古臭い、時代はベッドなのだ」と知ったような口をきいて懇願し、念願のベッドを入手することに成功した。

  ただスプリングはもう傷んでいるので新し物を買ってほしいとのことだったので、おかんがオークワかどこかでシングルのベッドスプリングを買ってきてくれた。ちなみにこのベッドとスプリングはこの先十三年ほど使用されることになる。

 ベッドを手に入れた私は漫画を読むのもゲームをするのも、可能な限り全てベッドの上で行なうようになり、妖怪ベッド野郎となった。とにかくベッドは快適なのだ。
 ベッド生活などどう考えても自堕落への直行便だ。私は小中高と家にいる間はベッドの上から一切動こうとしなかった。バレーボールに青春の汗を流すスポーツ少年とはまったく思えない。外弁慶内地蔵である。

 そんな私がその愛するシングルベッドと決別することになったのは二十六歳の頃だった。シングルベッドではどうも狭いと不満を募らせていた私はなぜか中途半端なセミダブルベッドを購入した。だが今回はサイズについて触れるのはやめておこう。
 フレームは収納機能も物が置けるヘッドボードも付いていないシンプルなもので、ウレタンマットレスだって七千円位で買った安物だったが、広くなったことで私は非常に満足していた。

 だがそうやって喜んでいられるのも最初の一、二カ月だけだった。朝起きた時、どうにもこうにも身体の節々が痛い。私は広いベッドで好きなだけ寝返りがうてるとセミダブルを狂信していたため、ベッドがおかしいという考えなどまったくなく「室温が適切でなかった」や「お風呂で疲れを取り切れていなかったのだ」などと世迷言をほざいていたのだが、違和感を覚え始めて二週間ほどが経った時、ようやく気が付いた。

「このマットレス、底付きしてるやん……」

 そう、私はベッドフレームのすのこの上に直接十センチくらいの薄っぺらい低反発マットレスを敷いていただけだったので、身体の重みでマットレスがへしゃげてすのこに身体が当たっていたのだ。

「何ということだ……。クソじゃないかこのマットレスは……」

 せっかくウキウキで買ったセミダブルのベッドがまさか身体を傷めつける疫病神だったとは、ショックの極みである。
 そこで私は得意のネット検索でベッドの底付き問題解消について調べた。だがやはりペラッペラのマットレス一枚でどうこうできる問題ではないらしく、出てきたのは『マットレスは良い物を買え』という答え一択であった。

 私は怒った。「な~にが『底付きなし! この低反発マットレス一枚で快適な夜を!』だ。看板には偽りしかないじゃないか。体重六十三キロの私で底付きするなら誰だって底付きするわ」とクレームでも入れてやろうかと思ったが、怒りを抑えてレビューで星ひとつを付けた後はジモティーを使って底付きマットレスを千円で売り払い、厚みが二十五センチあるドイツ・ムスタリング社のポケットコイルマットレスを四万二千円で購入した。
 これは“海外の高級ホテルの寝心地”をテーマに開発されたもので、いざ届いて寝てみると、その謳い文句を裏切らない完璧なマットレスだった。今まで自分が寝ていたのはいったい何だったのだろう。そんな疑問が浮かんでくるような凄まじい寝心地の良さで、起床時身体バキバキ問題どころか寝心地が良すぎてうっかり遅刻しそうになるくらいだった。一日の調子もまったく違う。ドーピングでもしているようだ。

 人生の三分の一から四分の一は寝ているので、寝具にお金を掛けることは人生を豊かにすることにもなる。私はこのマットレスを買って本当に良かったと思うが、一点だけ問題点がある。それは実家に帰ったり旅館に泊まったりして久々に布団で寝ると、普段の凄まじく良好な睡眠環境とのギャップで身体バキバキ問題が再発することだ。
 だがそんな年に数回の懸念なんかよりも、毎日の睡眠環境の方が大事だ。上を見ればもっと高級なマットレスはいくらでもあるが、私は数万円のマットレスで十分だと思う。

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