地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

貧弱なお尻の悩み解消~ソファ編~【地獄のイラストエッセイ】

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 以前“貧弱なお尻の悩み解消”というエッセイを書いたが、長時間イスに座っていられないほど尻が貧弱な私はプロテインを飲み、スクワットをしたことで多少の尻肉を身に付けたわけだが、それでもやはり一般人と比べて十分かと言われればまったく十分ではなかった。実家のコタツに入っても尻が痛すぎて座っていられず、今年の正月も座布団を七枚敷いたが痛すぎてすぐに飛び出たという逸話を残したほどだ。

  そんな私が日常生活でもっとも困るのは映画館でも深夜バスでもなく、自宅で腰を下ろす場所だった。
 二十六歳までの私は、ベッドの上で生きていた。実家にいた時も自室ではベッドの上で漫画を読んでゲームをし、泉大津で一人暮らしをした時もベッドの上でアニメを見てスマホをいじった。
 だが二十六歳になって横浜で一人暮らしをし始め、フォトショップやプレミアといったクリエイティブなパソコンのソフトを使う頻度が以前よりも上がったことで、ワイヤレスとは言えベッドの上でマウスやキーボードを操作するのに限界を感じた。

 そこで私はついに地上に降りる決意をした。これまで地上に腰を下ろすと言えば大晦日に実家のリビングで家族全員寿司と年越しそばを食べるためにコタツに入る時くらいしかなかったのだ。なぜそこまで地上に座りたがらないのかとはもはや言うまでもないだろうが一応言っておこう。地上に座ると尻が痛いからだ。

 痔ではないが尻のことを考えて“痔の方はこれ!”と書かれたドーナツ型のクッションを近所のドンキで買い、座ってみた。なんということだ。めちゃくちゃ痛い。五分も座っていると尻が悲鳴をあげ、サルの尻のように真っ赤になるような感覚を覚えた。
 このままでは地上での暮らしは不可能だと悟った私はさらにドンキで直径八十センチはある大型のふわふわマシュマロクッションを買い、ドーナツの下に置いた。二重クッションにしたのでこれで大丈夫だろうと思って座ってみると、六分で尻が大声で叫びだした。残念ながら一分余分に耐えられるかどうかくらいの変化しかもたらさなかったのだ。

 大変なのは分かっちゃいたが、私の尻問題は思っていたよりもずっと深刻だった。尻痛クッションに四千円もつぎ込んだ私は頭にきて、情報収集を始めた。今度こそ失敗せずに地上に降りるため、私はおそらく十時間ほどネットで調べ、楽天で一つの商品を購入した。
 それは“雲の上にいるような寝心地”との謳い文句の座椅子だった。地上に降りても雲の上にいられるなんて、私にとって願ってもない。これは座椅子とは言っても中にベッドのポケットコイルが入っており、全長は私の身長より長く、背中はもちろんフットレスト部分や足先部分までも細かくリクライニングの調整が出来るという優れモノだった。

「二万もしたんだ。レビューだって評判がいい。これで私の地上降臨はたしかな成功を収めるはず」
 私は届いた座椅子を見ながらそう言い聞かせ、ベッドからそろりと降り、腰掛けた。
 なんということだろう。お尻が痛くない! 私は一瞬座っただけで何分で痛くなるか分かるほどのスキルを持っていたのだが、これは数時間は耐えられそうな気配が漂っている。座って三秒しか経っていないが私はこの座椅子に全幅の信頼を置いた。一目惚れに近いものがある。
 私はたいそう感動してその後二年ほどこの座椅子に尻を委ねていたのだが、お別れの時はやって来た。結婚による引っ越しで、完全一人用のこの座椅子を連れて行くかどうかを考えた結果、残念ながらここで別れようということになった。私は尻という何より恥ずかしい部分を支えてくれたこの座椅子をジモティーという直接引き取りアプリで他人に売り渡し、新居に移る準備をした。

 新居に必要なのはまずソファだ。最優先で購入する必要がある。ネットでソファを探しまくっていた私は一つの商品に目を留め、気付いたことがあった。
「ぬ? これどっかで見たことあるぞ……?」
 私はソファにかなりうるさいので、イヤらしいことに他人の家に上がるとソファをかなり見ていたのだ。記憶を巡らせること数分、私は答えに辿り着いた。
「姉ちゃんの家のソファやん!」

 私は急いで姉に電話をした。聞くとやはり今画面に映し出されている物と同じ物が彼女の新居にペアで置かれているとのことだった。素晴らしい。私は服や音楽、インテリアなど、何かとおいて彼女と気が合うのだ。
 私はさっそくピグレットビッグというソファをペアで注文した。これは雲の上の座椅子と同様ポケットコイルがふんだんに入っており、角度も調整できるし伸ばせば簡易ベッドにもなる。私は姉の家でこれに座り、いたく感激したので座り心地の良さは分かっていたので、ペアで五万したがためらいはなかった。私の尻は数千円クラスの物では守れないのだ。自分の尻も守れず、これからどうやって家族を守っていくというのか。

 こうして購入したピグレットは今なお私の尻を守護し続けている。ちょっと頭が悪いようだが私は尻のガーディアンと呼んでいる。商品名のように子豚のような尻になれたらどれほど幸せかと思いながら、私は今日も子豚のピグレットに尻を預け、プロテインを飲み、風呂前にスクワットをしている。

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