地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

がんの兆候?血便で激怒した話【水無のイラストエッセイ】

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 みなさんは血便という一見恥ずかしい、人様には絶対言えない名前の症状を体験したことがあるだろうか。

  あれは私が今の会社に入ってようやくひと月が経ち、二十七歳になったばかりのある日のことだった。
 気付けばトイレの血が真っ赤になっていたのだ。特に痛みや違和感はなく、私は「まさか隠れ痔なんじゃ……」と嫌な予感を覚えながらもあまり気にせず過ごしていた。それからおよそ二週間後、またしても便器が血に染まった。相変わらず身体に違和感はない。私は実家のライングループで「誰か痔になったことのある人はいないか」と相談したが誰もおらず、そのことで「あんた痔なん?笑」と言われたので全力で否定し、ただ血が出ただけだと伝えたところすぐにおかんから電話がかかってきて「あんた! 血便は大病の予兆かもしれんから今すぐ病院行き!」と言われた。だが時刻は二十時過ぎ。もうどこもやっていないし、緊急病院に行くほど切迫した状況だとは思えなかったので、私は明日病院で診てもらう旨を伝えて電話を切り、インターネットで血便について調べた。するとそこには“大腸がん”という地獄のようなワードが表示され、見ていくと“血便があったら全ての物事よりも優先して受診すべき”と書かれていた。
 私は予期せぬ状況に身震いして「全ての物事より優先とは、夜だろうが今すぐ行けということなのだろうか……」と思いつつも、まさかと思って眠りに就いた。

 翌朝出社すると、私は上長に「血便が出た。とにかくマズいらしいので病院に行かせてください」と告げて病院へと向かった。上長は「あ、ああ……お大事に……」と戸惑っていたが、彼は血便がいかにヤバいかということを知らない。知っている私と知らない彼とでは同じ血便という言葉を聞いても受け取り方がまったく違うのだ。

 職場近くに胃腸科のある小さな町医者があるので予約を入れ、早速向かっていると段々と不安が募ってきた。もしがんだったらどうしよう。死ぬのか、あるいは抗がん剤治療を受けて生活していくことになるのかなど、私は最悪のケースを想定しまくっていた。基本的に悪いケースを考えてしまう質なのだ。

 医師に症状を説明し、すぐに受診した方がいいと聞いた旨を伝えると、痔なのか痛むのか便は何色なのかと、私は若い看護師の前で尻に関する機密情報を根掘り葉掘り吐かされた。すると医師は「念のため腸にカメラを入れて見てみましょう」と言い、私はお尻に穴の開いたヘンテコな病衣に着替えさせられ、ベッドに乗った。すると医師が「全身麻酔をかけますので、次に起きた時は検査は終わっています」と言った。

『きた!』
 何を隠そう私は全身麻酔というものを一度体験したいとずっと思っていたのだ。一瞬で眠ってしまうとはどういう感覚なのだろうと、私は眠りに落ちる瞬間を今や遅しと待ち構えていた。きっと「ああ、だんだん眠たくなってきた……だが不思議とこの眠気に抗うことが出来ない……ああ……意識が……」となるのだろう。私はお尻のことなど忘れて今か今かとその感覚を待ち構えていた。しかし眠気はやってこなかった。これはいったいどうしたことか。麻酔が効いていないのだとしたらえらいことになる。私は痛いのが大の苦手なのだ。これはどこかおかしいと思って首を少し上げて辺りを見渡してみると、近くにいた若い看護師の女性が言った。
「あ、目が覚めましたか?」

『メガサメマシタカ?』
 私はその聞こえてきた言葉を理解しようとしてみたが、どうも頭がぼんやりとしていけない。そうやって答えられずにモゴモゴしていると、彼女は「先生を呼んできますね。検査の結果を聞きましょう」と言った。
 私はそこでようやく自分がいつの間にか眠りに落ち、検査を終えて別室に連れて来られていたのだと気が付いた。
 なんということだ。あれほど楽しみにしていた眠りの体験はまったく気が付かないうちに終わってしまっていたのだ。私は改めて麻酔の凄まじさを実感した。

 だが結果を聞いた私は落胆した。私は大腸がんか痔のどちらかだと思っていたのだが、彼は「どちらでもないですね。よくは分からないですがそこまで気にする必要はないでしょう」と言ったのだ。これには普段温厚な私もプツーンと来てしまい「こっちは大腸がんかもしれないと不安になって受診しに来ているのに『よく分からないけど気にするな』とはどういうことか」とけっこうな具合で責め立ててしまった。
 医師は「そう言われましても……」と言って困っていたが「そう言われましても……」と言いたいのはこっちの方である。この病院では分からないのならそう言ってもっと大きい病院を紹介するか、明確な理由を言って私を安心させるかのどちらかにすべきだったのだ。

 私は激怒しながら会社に戻り「あそこはヤブだ」と上長にキレた。「そうか……でも何もなかったならひとまず良かったんじゃないかな……?」と言った。この男は血便のヤバさも私の怒りも何も理解していないのだ。
 その後、私は入社早々血便で半休を取り、その病院でブチギレたと話題の男になってしまった。詳しく説明すると理解してくれた人もおり、私はその彼が今でもけっこう好きだ。

 その後もインターネットで調べたり健康診断でオプションを付けたりして色々やってみたが、特に異常はないようでひとまず大腸がんのことは忘れて平穏に暮らしている。
 だが人は誰しも『まさか自分が大病を患っているなんてそんな馬鹿な』と思うものなので、どこか不安があるようならまさかと思いながらも全ての物事よりも優先して受診した方がいいと思う。健康は一生ものだ。
「仕事が忙しいから」と受診しない人をたまに見かけるが、大事なプロジェクトよりも身体の方がよほど大事だと私は思う。
「この仕事ができるなら死んでもいい」とまで思っているのならそれも人生かもしれないが、私は病院に行った方がいいのになと思う。

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