地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

値切りの文化【水無のイラストエッセイ】

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 私はこれまで一万五千円の服を四千円で買い、家電量販店で総額二十万円の買い物をした際に四万円値引いてもらったことがある。値切りとは関西――特に大阪――の文化なのだ。

 『大阪人は家電量販店に行くと絶対値切る』世間ではこういったイメージを持たれている大阪人だが、実際のところどうなのか。
 答えは概ねイエスである。家電量販店は値切られる前提の値段を付けていることが多いので、値切らず買うと店は「ひっひっひあいつあの値段で買いやがったぜ。丸儲けだ!」と大喜びなのだ。関西人全員が値切るかと言えばノーだが、値切るべき場所で値切らないというのは、ボランティアか金を捨てる行為に等しいのだ。

 しかし我々にもルールがある。そこかしこで場所もわきまえずに値切り倒すわけではないのだ。まずは値切っていいものや場所を思いつく限り羅列してみよう。
 家電、車、不動産、フリーマーケット、バザーなどの青空市場、アメリカ村などのラフな服屋、馴染みの個人商店などが主ではないだろうか。
 こういった場所では値切れる可能性がかなり高い。ではまずどう言えば安くしてもらいやすいのか。

 値切り術においてとにかく一番大切なのは好印象を与えることである。「こんなんもっと安くなるやろ! 高いわ!」と言うような客に値引いてまで買ってもらいたいと思う店員などいない。会話などからいい関係を構築してから初めて値切るのだ。第一声で「安くして」では、値引いてくれたとしてもおそらく値引き額に差が出る。売り手に嫌な思いをさせてはいけない。これはルールであり不文律であり、我々買う側の美徳でもある。

 次に大事なのは「値切るなんていいのかしら……」という謎の遠慮を持たないことだ。明るくフレンドリーに言ってみれば、案外快く安くしてくれるものだ。そういった買い物はこちらも気分が良く、周りに話したくなるので送客効果を生む。店側もそういう業種は値切られる前提で出店しているので、常識外の交渉でなければ悪い気はしないものだ。

 ここからは私の個人的な交渉術を二つ紹介したい。
 まず一つ目は、常識の範囲内でドンと安い値段で交渉してみることだ。例えば六千円の服に対して「五千円でどうですか」と控えめに交渉した場合、店的に許容範囲であれば交渉成立となり、それ以上の割引は望めない。
 私ならこの場合、雰囲気にもよるがだいたい四千円くらいで交渉することが多い。もしそれで買えたらラッキーだし、店側が「四千円は厳しいですね」となれば「じゃあ四千五百円では?」と再交渉できる。いきなり二千円にしろなどと絶対ありえない交渉をしては信頼関係が壊れてしまうので、その感覚を身につける必要があるが、これは場数を踏まないと体得できないかもしれない。

 そしてもう一つが奥の手『そこまで興味ないフリ』である。普通に交渉しても値引いてもらえないかなと感じた際に発動する究極奥義で、どうですかと聞かれてもそこまで興味が強くない風を装うのだ。
 興味津々で買う気満々なのが伝わると、店側に『こいつは値引かなくても買ってくれるだろう』と思われて交渉がスムーズにいかないことが多い。なのでめちゃくちゃ欲しくて跳ねまわりそうな気持を抑えて「そうですね……もっと安ければ考えようかなってくらいですね。正直予算オーバーです」と言ったように、向こうから値引きを提案したくなるように誘導するのだ。自分からグイグイいくのが苦手な人にもこのやり方は有効的だ。
 他にもこのやり方は一度相手にいくら位になるのか確認した後に発動することで、更なる値引きを受けられる可能性を秘めた技なのだ。

 余談だが、私はマルイに入っている靴屋で八千円の物を半額で買ったことがある。ラスト一点で少し汚れがあるものだったので「この汚れは洗えば確実に落ちますか?」と聞き、確実かどうかは分からないと言われたので「そうですか……汚れが落ちなかったら嫌ですからね。展示品なので安くなりませんか?」と交渉したところ、B品として半額で売ってもらえたのだ。普段はマルイで値切るなどしないが、状況によっては大丈夫なのだ。

 値切り文化の中で生まれ育った我々は、このようにして買い物をする。しかしそれは時と場合により、相手を不快にさせてはいけないという大前提があっての話だ。なので急に実践してみても失敗する可能性がある。まずは値切りに慣れた人の話術を参考にしつつ、挑戦してみるのがいいのではないだろうか。
 仲良くなった店員さんから楽しく安く買えた時の記憶は、何年経っても色あせない。アメ村のあのお兄さん、今でも元気だろうか。

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