地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

電車でHな漫画に目覚めるおじさん【水無のイラストエッセイ】

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 私の地元、大阪の南海電車という私鉄は色々と有名である。日本最古の私鉄であること、料金がバカ高いこと、そしてこれは私の周りでよく言われているのだが、変な人が多いことだ。

  夜、ガラガラの車内で酔っ払いのおっちゃんが突然座席から崩れ落ちて地面に倒れたかと思うと大量のゲロを吐き、おもむろに起き上がってゾンビみたいにふらふらと周囲を彷徨い始めた時は「ああ、バイオハザードってこうやって始まるんだな」と思った。話のネタが出来たとほくそ笑みつつも、汚いものが大嫌いな私は隣の車両へと逃げ移った。

 汚い話ばかりで申し訳ないが、私は人が脱糞する瞬間を見たことがある。これもまた夜のガラガラの車両で、これまた酔っ払いのおっちゃんが無意識でつり革に掴まって身体を前後にガコンガコンさせていると、突然ブリブリブリ! と豪快にズボンを真っ茶色に染めた。面白いもの大好きな私もさすがにこれにはドン引きしてしまい、においが漂ってくる前に他の車両へと逃げた。

 あとは延々とおたまじゃくしについて話すヤンキー二人組や「うひょひょ!」と言いながらトランプを切る中年男性など、意味不明な人類に出会ったこともある。
 だが私が一番よく覚えているのは真面目そうなおっちゃんがHな漫画に興味を持った瞬間に出くわした時のことだ。けっこう鮮明に覚えているので、当時の私の目線で書いてみようと思う。

    ※

 尾崎駅で急行に乗り換えて腰を下ろすこと十分。泉佐野の駅で乗り込んできて私の隣に座ったのは年齢六十歳前後、真面目そうなオールバックの役員っぽいおっちゃんだった。
 おっちゃんは席に座るとおもむろにカバンから“週刊漫画Times”を取り出して読み始めたので、やることがない私はイヤらしいことに横目でどんな漫画があるのかチラチラと盗み見していた。
 初めのうちはサラリーマンが主人公の漫画を読んでいたのだが、次におっちゃんがページをめくるとあらヤだいきなりエッチな漫画。
 しかしこのおっちゃんはそんじょそこらのエロオヤジとは違う。真面目な彼はそんなエッチな漫画になど見向きもしない。

 勤続年数三十五年。六年前ついに役員に就任しました。先月家族旅行で熱海にも行きました。

 早く次の真面目な漫画を読もうとおっちゃんはパパパとページをめくっていく。
 だがそのペラペラと飛ばされていくエッチな漫画もようやく半分も過ぎ、そのハレンチ具合も佳境を向かえた頃。
 おっちゃんのページをめくる手がピタリと止まった。

 私は一瞬『ぬ?』と思ったが、しかしこの真面目そうなおっちゃんはそんなエッチな漫画に興味など無いのだ。

 妻と出会ってはや三十年。最近家庭菜園を始めました。老後に備えて保険も切り替えました。

 …………

 オヤジはエッチな漫画に興味津津だ! オヤジはそのままエッチな漫画への着陸態勢に入った! よく見るとオヤジの目が一点に釘付けになっている! おいオヤジ! そんな特に過激なシーンを電車の中で!

 オヤジはこれ以上無いってぐらい真剣な顔で、おそろしくエッチな漫画を見ている! もう家庭菜園も役員の座も関係ない! 今のオヤジの頭はもうこのエッチな漫画の事でいっぱいだ!

 オヤジはページをめくった! ま、まだエッチなシーンだ! いったいどれだけそんなイヤらしい事をすれば気が済むんだ! だがオヤジにとってそれはむしろ願ってもない展開! オヤジは人目もはばからず、ただただ無心にエッチなシーンを読みあさる!

 その時、なんとふいにオヤジが立ち上がった! いつの間にかオヤジは降りる駅に着いていたのだ! しかしオヤジは立ち上がってもなおそのエッチな漫画を読むことをやめない! オヤジはそのやたらめったらエッチな漫画を読んだまま扉の方へと歩いて行く! 後ろには若いお姉ちゃんが立っているというのに! オヤジよ! まさかそのまま会社に行くつもりではないだろうな!

 駅に着いた!
 扉が開いた!
 オヤジはそのままエッチな漫画を読みながら降車した!

 もう彼は今日の役員会議などどうでもいい! 一日中ずっとこのエッチな漫画のことを考えて過ごそう! そうだお局の中堅女子社員にも見せてやろう! 最近彼氏に振られたと愚痴っていたからきっと喜ぶに違いない! それでは今から出社なんでね! アデュオス!

    ※

 こんな感じの出来事があり、私は笑いを堪えるのに必死だった。笑い転げるのを必死に我慢しすぎて鼻の穴と腹筋がビクンビクンと動いていたのを今でもよく覚えている。
 結局彼はその後どうなったのだろう。あれは一時の気の迷いだったのだろうか。それともハレンチな趣味を持つようになったのだろうか。もし身に覚えのあるおっちゃんがこれを読んだなら名乗り出てほしい。ぜひ対談をしたい。

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