地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

交通事故と後遺障害【水無のイラストエッセイ】

f:id:Essay_Miznashi:20201012201129j:plain

読み終わった後はぜひブックマークボタンを押して応援お願いします(‘∀‘)

 松竹芸能で役者の仕事をしていた二十三歳の時、仕事を終えた私がアメリカンバイクで細い小道を走っていると、脇道から一時停止を無視して飛び出してきた車に追突された。事故経験者はよく『事故の瞬間全てがスローになった』という話をするが、私はそんなものは気のせいだと思っていた。作り話の世界じゃあるまいし、スローモーションになどなるかものか。

  だが横から車に追突された瞬間、私の見る景色は急速に速度を緩めた。私は脳が時間を稼いでくれている間に対向車や後続車がいないことを確認すると、バイクから飛び降りて受け身を取った。
 そのおかげか私は目立つ外傷もなく、むっくりと立ち上がるとツカツカと車の方に向かって歩き、運転手を外へ出した。逃げられてはたまらない。
 加害者は中年のオッサンで「あわわ」だか「ヒィイイ」だかと狼狽していたので、私はそこから一歩も動くなと言い渡すと警察に連絡した。連絡を終えてオッサンから目を離すと、それまでなぜ気に掛けなかったのか分からないが初めて吹き飛ばされた自分のバイクを見た。ビラーゴという初めて買った250ccのバイクで、とても大事にしてきた。それが無残にも横たわり、変な音を上げている。私はもう一度オッサンに動かないよう指示をするとバイクに駆け寄り、エンジンを切った。引火して爆発など起こしてはシャレにならない。

 その後警察や保険会社とやり取りをし、ほぼ十対ゼロになったので保険で新しいバイクを買った。だが私の事故は新しいバイクを買って終わりではなかった。あの事故以来、どうも腰が痛い。腰を曲げるとズキっと痛み、伸びをするとバキっと痛かった。これはひょっとすると事故の影響かもしれない。私はすぐに保険会社に連絡をすると、治療費が出るはずなので病院に行った方がいいと言われ、すぐに近所の総合病院へ向かった。

 レントゲンやら触診やらを経て分かったのは『筋肉や筋が何らかの炎症を起こしている』ということで、治るまで定期的に通った方がいいと言われた。私はそのことを保険会社に伝えたところ、通った分だけ治療費と慰謝料が発生するので治るまでどうぞと言われた。
 突然の受難によって身体を痛めたことで私は加害者のオッサンに対してかなり強い怒りを覚えていたのだが、慰謝料が貰えるという言葉を聞いて私は天にも昇る気持ちになった。私は家に帰るとおかんに「やったー! 慰謝料が貰えるってさ! 事故さまさまやね良かったアハハー」などと知能の低そうな言葉で喜びを表現したところ「あんた役者は身体が大事やのに、そんなちょっとの慰謝料なんかで喜んで、将来不都合があったらどうすんの!」と、ごもっともなひんしゅくを買った。

 人生で初めて訪れたリハビリ科で受けたのはマッサージで、マッサージ好きの私からすればタダで気持ちよく体をほぐしてもらえるうえに慰謝料まで貰えるとあって、多少の腰の痛みなどえっちゃらほいといった感じで、ワクワクしながら週三回ほど通院した。周りの患者が必死にリハビリに励むなか、私だけがニヤニヤとしていた。本当にどうしようもない男だ。

 だが貧乏な私に金を運んでくれる喜びの腰痛も、一年治らなければさすがに不安の種になる。病院のマッサージを半年受けたがてんで良くならなかったので、私はカイロプラクティックという整体や針治療などを受けたが、私の腰は元のハツラツさを取り戻すことはなかった。
 保険屋からは「これ以上治療費などを受け取るのは難しいので、腰は症状固定として後遺障害の認定を受けましょう」と言われた。ヘラヘラと金が貰えると喜んでいたあの頃の私は、まさか自分に後遺症が残るなどとは思ってもいなかっただろう。私は二百万円ばかりの慰謝料と共に後遺症まで受け取る羽目になってしまった。

 私の腰はこの先どうなってしまうのだろうと不安に駆られていたが、気付けばその翌年頃にはすっかり良くなっていた。せっせと通院していた時はたいして良くならなかったのに、手に入れた金で留学をしているうちに治っていたのである。
 病は気からと言うが、それにしても私の身体は少しばかり現金すぎるのではないだろうか。

ブックマークしてくださるとめちゃくちゃ嬉しいです。
毎日19時に面白おかしいエッセイを投稿中!Twitterで投稿を告知していますので、フォローいただければ相互させていただきます。 足をお運びくださりありがとうございました。