地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

最終決戦兵器まで投入した、ニキビとの攻防【水無のイラストエッセイ】

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 中学3年の頃、ついに危惧していた恐怖が我が身を襲った。おでこに赤いニキビができたのだ。

  それまで私は卵のような白くて綺麗な肌をしており、人からよく肌を褒められていたのだが、奴の襲来によって私の肌問題と自尊心は混沌の渦へと吸い込まれていった。
 最初はニキビができただなんて恥ずかしさと悔しさで親にも言えるもんかと、前髪を下ろして必死に隠していたのだが、そうすることで私の髪に付いた汚れやらワックスが奴らの癇に障ったのか「コンニャロウこうしてやるわー!」と言わんばかりに赤みはどんどんと増していった。
 これ以上悪化してしまってはこの世の終わりだと、私はプライドを拳の中にしまい込んでおかんに相談した。すると楽観的な彼女は「あらほんま! ドクダミ塗っときドクダミ!」と、庭に生えているドクダミという異様に臭い葉っぱの汁をおでこに付けろと言い出したのだ。てっきりプロアクティブのようなニキビ治療薬を買ってもらえるものだと思っていた私はその対応に怒り心頭で反抗したが、彼女が勧めてくるのはドクダミ汁を塗ることだけで、高価なプロアクティブを買ってくれることはなかった。
 あんな臭い葉っぱの汁をおでこに塗るくらいなら死んだ方がマシだと、私はその日からでこ出し生活を始めた。姉にヘアバンドを貰い、家にいる時は絶対に前髪がおでこに付かないよう細心の注意を払った。それでも私のおでこは元の卵肌に戻るばかりか、どんどんと悪化の一途を辿るばかりだった。

 高校に入ってからも、私はニキビに悩まされ続けた。範囲はおでこだけだったので人からはあまりよくわからないし、さして重傷のニキビ肌というわけでもなかったが、これまでお肌が綺麗と言われて育ってきた私にとって、ニキビが顔面であぐらをかいている今の状況は耐え難いものだった。しかし前回の美容室の話でも書いたとおり、当時の私は大変なマセガキで、ワックスを付けずに門扉を潜るなど辱め同然という価値観を持っていたので、天に向けてセットしていた前髪が時間経過でへたってきては奴らにタッチするという、どうしようもない悪循環を変えることはできなかった。
 様々なことにおいて対応策を張り巡らせるのが得意な私だったが、ことニキビに関しては完全にお手上げ状態だった。水洗顔や保湿、睡眠時間の確保やビタミンの摂取など、ありとあらゆる書物を読み漁って実行したが、何一つ効果は得られなかった。もう無理だと諦めかけていた高校3年の時、かつておかんに勧められたドクダミの汁をやけくそでおでこに塗りたくったが、奴らが姿を消すことはなかった。ペニシリンよりも強い殺菌効果があるというドクダミでも太刀打ちできだないなんて、私のニキビはいったい何を考えているのか。私は完全に諦めの境地だった。

 ニキビとの共存を許して1年が経った専門学校時代、難波のドン・キホーテでアルバイトをしていた私は、帰宅途中の心斎橋筋商店街でふと一つの看板に目を留めた。そこには『ニキビ治療はピーリングとレーザーで!』と書かれていた。
 これだ! と私は思い、評判のいい南堀江の店をネットで見つけて早速行ってみた。普通の皮膚科には何度か行ったことがあるが、こういった特殊な器具を使う最新鋭の美容皮膚科などは知りもしなかったのだ。これまで私がやっていたヘアバンドや洗顔の仕方といった対症療法や、ドクダミを庭から引っこ抜いて塗るという民間療法とは期待値が明らかに違う。これは治るぞと浮足立って中に入ると、私は早速ケミカルピーリングという表皮再生を促進させて角質層の機能を改善させる治療を受けた。聞いたこともないような単語群の登場に、私は期待に胸を膨らませて一定期間通い、学生にしては結構な額を使ったが、奴らは変わらず私のおでこを領地として君臨し続けた。
 それから少しして、治らない皮膚科に通う金があるならアレが買えるじゃないかと気付き、私はついに最終決戦兵器のプロアクティブにまで手を染めたが、結果は同じだった。

 3年後、22歳になると、あれほど私のおでこを蹂躙していたニキビが消えた。それは何の前触れもなかったし、何か治療をしていたわけでもなかった。私はただ単にニキビが出来やすい時期に患い、ニキビが出来にくい時期に突入したのだ。
 人によるのかもしれないが、何をしてもダメな人は忘れる努力をした方が、精神的に楽だと思う。
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