地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

【COACHご乱心】クララとハイジがCOACHに来店した話【水無のイラストエッセイ】

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 ハンドバッグの老舗ブランドCOACHで働いていた二十一歳の時のこと。
 私の店には店長のマダムとキツネ目の怖い副店長、そして今回の話の中心人物であるもう一人の副店長がいた。彼女は四十歳前後で、普段から「アララ~」と謎の動きをしたり困ったらフラダンスを踊りだしたりとかなりクレイジーなお姉さんで、真面目な人が多い店内では異彩を放っており、私は秘かに注目していた。

  そんなある日、マダムもキツネ目のお姉さんもおらず、店長クラスがアララさんだけの日があった。
 COACHではタイムカードを切ってフロアに出る前にミーティングを行なうのだが、その際たまに“コーディネート練習”という、全員共通のテーマを決めてバッグをベースにプラス財布やスカーフ、チャームなど、複数購入してもらえるための練習を行なっていた。
 だいたいいつものテーマは『暖かくなってきたのでお花見に』とか『三十代のお母さんが子どもの卒園式に出る時に』といったようなお堅いテーマが多いのだが、さすが彼女。やってくれました。

『水無くんってクララみたいな子が好きなんやろ? じゃあ今日のテーマはクララにしましょ! いやね~私もハイジ大好きでさ~見てたわよ~リアルタイムで~オホホホホ』

(ササー)

 みんな一瞬凍りついたものの『そういえば今日はこの人だけやし、ひょっとしたら面白いんじゃないか』と気付き、コーディネートをするためにノリノリでフロアに出て行った。

 そして準備が整い、発表の時がやってきた。最初の発表者は私だ。

「彼女は足が冷えるといけないので、分厚いマフラーを膝掛けに見立て、白い肌が日焼けしないようツバの大きな帽子を。また、彼女は力があまりないのでこの軽いバッグを選びました」

 一同バカウケ。今日のヒーローは自分だと確信したが、他のお姉ちゃん達もさすがプロ。めちゃくちゃ面白い。

「彼女には薬入れが必要だから」と小さなポーチをつけてみたり、また別のお姉ちゃんは「クララは金髪なので、日本に来てギャルになるかもしれない」とわけのわからない妄想を始め、ショッキングピンクのバッグにヒョウ柄の小物入れを用意した。それを見たアララさんは「ヒョウ柄て! じゃあクララは牛に驚いて立ったんじゃなくてヒョウを見て立ったんや! ヒーッヒッヒッヒッヒッ」と腹を抱えて笑い、周りを氷河期にタイムスリップさせた。かなりの魔女っ子である。

 味をしめた彼女は「次の中番の子達にもやってもらお! 次はハイジやな!」と大喜びだった。

 そして十一時に出勤してきたお姉ちゃん達はハイジをテーマにコーディネートの練習を開始。私は裏で納品処理をしていたのでハイジの様子も全て見ていたのだが、これまた素晴らしい提案ばかり。

「きっと山を走り回られると思いますので、ご来店いただいた際には両手が使える斜め掛けバッグをお勧めしたいです」
「きっと乱雑にお使いになられると思いますので、汚れの付きにくいこのバッグとお手入れ用のクリーナーを選びました」
「羊のユキちゃんと仲良くなるために、羊のチャームをバッグに付けました」

 などともはやふざけているのか本気なのか分からない感じになり、ハイジ大好き、乙女のトキメキアララさんは終始大興奮のご様子だった。

 だが喜んでいたのは彼女だけでなく、休憩時間はみんなその話でもちきりになり、楽しい気持ちが接客にも出ていたのかその日の売り上げは普段よりもけっこう高かった。
 普段は“やり手のバリバリキャリアウーマン!”という人ではなかったが、こういう人がいる職場の方が仕事のモチベーションが上がり、結果良い成績を出すと言うこともあるのではないだろうか。

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