地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

平熱を上げる作戦【水無のイラストエッセイ】

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 先日『風邪に支配された人生』というエッセイを書いたが、とにかく私は風邪をよく引く人間だった。年に十回は風邪を引いていたのでさすがにこれはおかしいと思い、二十七歳の時に改めて改善策を調べ始めた。

  とは言え私はもとより手洗いうがいは徹底的に敢行していたし、乾燥期はベッド横で加湿器を焚いている。就寝時は靴下だって履くし、マルチビタミンのサプリだって摂取している。
 ネットを漁りながら「何か一つくらいは有益な対策法がないものか」とブツブツ言っていると、ふと一つの記事が目に留まった。

『体温が一度上がると免疫力が三十パーセント上がり、風邪を引きにくくなる』

「これだ!」と私は飛びついた。何を隠そう私は低体温症で、平熱は三十五度八分しかなかったのだ。冬になると末端冷え性まで併発し、凍った手先で人に触れると「ギャー!」と振り払われるほどだ。
 そしてさらにその記事には『日本人の平均体温は三十六度八分以上』と書かれていたのだ。私にとって三十六度八分と言えば身体が火照り、倦怠感と思考能力低下が現れる体温なので、これは衝撃だった。家族も友人もイオンですれ違う人々も、みなそのような高温で生きているが故に私ほど風邪にかからないのかと思うと、急に平熱が三十六度八分以上ある日本人が恨めしく思えてきた。

 やると決めた時の私の行動力は凄まじい。平熱を上げるための情報を次々と仕入れ、実践していった。私がやったのは次の三点だ。

・なるべく身体を冷やす食べ物を取らない
・スクワット
・毎日風呂に浸かる

 まず食べ物に関してだが、私は冬場でも冷たい炭酸飲料を飲むのが好きで、夏場は冷蔵庫に水やジャスミン茶を作って常に冷やしていた。しかし当然のことながら冷たい飲食物は直接体温を下げるので、真夏でも浄水器から捻った常温の水を飲むようにした。最初は清涼感が足りないと不満を口にしていたが、慣れればどうと言うことはなかった。とは言えまったく冷たいものを飲まないのも面白くないので、外出中や風呂上りに炭酸水をキューッとやるくらいは良しとしている。
 他にはショウガが身体を温めるのに非常に良いというのは周知の事実であるが、それをどう摂取しようかと考えたところ、ショウガ湯がいいのではと思い至った。私はさっそく吉野本葛が使われたトロトロのショウガ湯を購入し、飲んでみた。するとどうだろう、体内に入ったショウガが身体の中で発熱しているかのようにポカポカと冷え固まった私を温め始めたではないか。
「こりゃいいぞ!」と、私は職場にもショウガ湯を持ち込み、分厚いブランケットを被って熱いショウガ湯を啜りながらパソコンで仕事をした。その姿は傍から見れば会社に居ついた座敷童か亡霊のようだと思う。
 次に足腰の筋肉をつけることが大事とのことで、スクワットを日課にすることにした。不精な私に本格的な筋トレは出来ないため、風呂前にスマホで動画を見ながら年の数だけスクワットをするというのを習慣づけることにした。
 最後に風呂だが、私はこれまであまり湯船に浸かる習慣がなかった。というのも若干の潔癖さゆえに実家住まいの時は先に誰かが入ったお湯に入るのが苦手だったし、一人暮らしを始めてからは面倒くさいしお金がかかるからとほとんど沸かしたことがなかった。だがこの風呂こそが平熱を上げる活動のカギを握るらしく、私は夏でも毎日風呂に入るようにした。なんなら身体が温まるショウガやジャスミンの入浴剤を入れるなどして、世の一般男性よりも入浴を楽しみ始めた。

 こうして一年が経ち、私の平熱は見事三十六度八分まで上昇した。以前と比べてきっかり一度上がったことで、たしかに私は風邪を引きにくくなり、倦怠感も幾分かマシになった。加えて元々風邪の治し方も研究を重ねていたため、私は風邪のエキスパートとなっていた。
 さらに私はこの平熱を上げる作戦の副産物として、論理的思考を手に入れた。以前は頻繁に風邪を引くのでどうやって早く治そうかと考えていたのだが、そもそも風邪を引きやすい身体を根本的に改善するのが重要であると気付き、その他生活内容や仕事なども対症療法から根本治療に切り替えることでより良い結果が得られるのだと気付いた。以前のエッセイで『私の人生は風邪に支配されている』と書いたが、その支配下にあったからこそ成功したこともあった。人生というのは、本当に何があるか分からない。
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