地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

騙されてワイヤレスイヤホンを買った話【イラストエッセイスト水無】

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「イヤホンを充電するなんて面倒くさいの極みやろ。私にゃ無理! 有線最高!」
 ずっとそう思っていた私がワイヤレスイヤホンを勧められて買うに至った経緯を最初から書いていこうと思う。はじめに断っておくが、私は高額の機器を買い揃えるオーディオマニアではない。

  私の人生はイヤホンと共にあったと言っても過言ではない。中学の一年で音楽に魅了されて以来、私はMDコンポとMDウォークマン、そしてイヤホンが無くては生きていけない身体になっていた。
 初めて買ったイヤホンはダイソーの物だった。人生で初めてイヤホンを装着した私は「耳に直接音が流れてくる!」とたいそう感動したが、使い始めてひと月ほどで「普段コンポで聞こえている楽器の音がこの安いイヤホンだと一部聞こえない」と不満を口にするようになり、早々に買い替えを決意した。
 しかし千円二千円というのは月のお小遣いが千円だった私にとってわりと大きな金額で、他にもやりたいことがたくさんあった私はお年玉を待つことにした。

 満を持して迎えたお正月、音楽好きの姉と共に近所のニノミヤという家電屋に向かい、今後幾度となく足を踏み入れることになる音響コーナーへと生まれて初めて立ち入った。今と違って当時はイヤホンを視聴するという概念がなかったため、店の人にオススメを聞いて千五百円ほどのサンヨーのイヤホンを購入した。姉が「激しめのバンドを聴くんです」と言ってくれたのが功を奏し、ダイソーのイヤホンではほとんど聞こえなかったベースの音がしっかりと聞こえた。当時の私はイヤホンによって得意なジャンルがあることなど知る由もなかったのだ。

 だがそのイヤホンは購入して一年足らずで使用不可能になった。家ではそこらに投げ散らかし、通学カバンにはぐちゃぐちゃに突っこんだりとかなりぞんざいに扱ったことで断線したのだ。
 しかし電化製品がそんないとも簡単に壊れるとは思わない私はメーカー一年保証の書類を振りかざし「交換してほしい」とニノミヤに突撃した。私が従業員なら絶対に対応したくない。
 こうして私は再び新品のイヤホンを手に入れ、その後も中学生の間は同じ価格帯のイヤホンをもう一度買い、高校や専門学校時代は三千円前後のイヤホンを買った。この頃になるとメーカーやモデルによる音質の違いを徐々に把握しはじめ、音質ガチャと私が呼ぶ、視聴不可能な店でのイヤホン購入で失敗をすることは一度もなかった。ちなみに私は音が籠っておらず重低音もある程度強い物が好きで、オーディオテクニカを選ぶことが比較的多い。

 ここ数年はヨドバシカメラなど大型の店舗に行くとほとんどすべてのイヤホンが視聴可能となったため、音質ガチャを回す必要はなくなったのだが、その代わりイヤホンコーナーの滞在時間が一時間を超えることも珍しくなくなった。
 さらに仕事で映像編集をするので、私は千円から一万円ほどのモデルを端から吟味して回った。二年前に吟味の末買ったのは千三百円の骸骨のイラストが付いた格安モデルだったのだが、聞き比べた結果もっと上の価格帯の商品よりも私好みの音質で、コードもきしめんのような平べったいもので、絡まりにくくて非常に良い。
 イヤホンは高ければいいという考えがまったく通じない世界なので、吟味すれば安くても自分好みの音質に出会えるのだと言うことをぜひ皆さんにこの場でお伝えしたい。

 前置きが長くなったが、そんなイヤホン愛好家の私でも近年不満に思うことがあった。それはカナル式という、シリコンだかゴムだかのイヤーピースが付いたここ数年主流のイヤホンなのだが、たしかに音漏れが激的に減り、耳から外れにくい商品なのだが、コードが服などに触れた時に鳴るキュッキュという異音が非常に煩わしい。コードが揺れないよう服の中に忍ばせたり、バッグのストラップに掛けたりといろいろと試したが、絶対的に防ぐことは不可能だった。

 そんなある日、バンドメンバーのアキラミチル君が一万何千円かするワイヤレスイヤホンを買ったからと我が家にわざわざやって来て「お前も買ってほしい! この快感を共有したい! 騙されたと思ってぜひ!」と布教してきたのだが、私はそんな彼の申し出を「イヤホンを充電するなんて面倒くさいの極みやろ。私にゃ無理! 有線最高!」と三分ほど前にどこかで聞いたセリフで彼を撃退した。
 だがなぜかその数日後から私はワイヤレスイヤホンが気になりだし、一カ月後にはレビューサイトを読み漁るほど夢中になってしまった。

 死ぬほど吟味した結果、私はアンカーのエアーツーという商品を購入した。視聴こそできないが、この商品はアプリを入れるとイコライザーで自分好みの音質に変えることができるので、音質ガチャを嫌う私の背中を押してくれた。
 また、充電なんてアホらしいと思っていたが、本体とケース合わせて二十八時間使えるので、充電の頻度はかなり低い。併せてワイヤレス充電器を同時に買ったので、ケースごとポンと載せるだけで何の手間もない。さらにケースから出したらスマホと勝手に繋がってくれるので、絡まったコードをほどいたり差したりするよりよっぽど楽でいい。
 音質だって全然いいし、嫌っていたコードのキュッキュ音からも解放され、私は今、この世全ての煩わしさから解放されたような心地だ。

 あれだけ嫌っていたワイヤレスイヤホンだが、食わず嫌いは良くないなと改めて実感させられた。そして「騙されたと思って! 頼む!」となぜか必死にプレゼンしてきた彼を足蹴にしてしまい、申し訳ないことをしたなと私は少し反省するのであった。
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これからもエッセイを投稿していきますので、気に入っていただけましたらまたご覧ください。
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ありがとうございました。