地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

気付けば1,000万再生のYouTuberにされていた話【イラストエッセイスト水無】

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 なろうとしたわけではまったくないのに、気付けば私は合計1,000万再生のYouTuberになってしまっていた。今回はその不思議な経緯を書こうと思う。

  こう言うと非難されるかもしれないが、私はYouTuberという方々がどうも苦手だ。例えばゲームの内容を知りたいと検索し、動画を再生すると「はいどうもこんにちは~」だった場合や、音楽の公式動画かと思って開くとカラオケだった場合などはどうも身の毛がよだって仕方ない。私はわりと頑ななところがあり、どうもまだ配信という文化に馴染めないのだ。
 そんな私がなぜYouTuberになってしまったかという話だが、今の動画制作会社に転職した数年前まで時間を巻き戻す必要がある。

 動画制作が出来る人を探しているという知り合いの紹介で面接をすることになったのだが、聞けばYouTubeでゲーム実況動画を制作しているとのこと。もっとも苦手なジャンルなので悪いが断ろうと思ったのだが、一度面接だけでもと言われたので、私は話だけならと面接を受けさせてもらった。
 しかし意外なことに実際話を聞いてみると、極黒と呼び声高い映像制作業界にしては珍しくかなりのホワイト企業なうえ、ゲーム実況と言ってもバラエティー要素が強いため、面白い物を作るのが得意な私の強みを活かせるのではないかと思った。そうして私は今の会社に入社した。

入社後しばらくは動画の編集を任されていたのだが、ゲーム実況なんてどうやって編集すればいいのか分からないので、入社までに仕入れた知識で「なんとなくこんな感じだろうか」といったように試行錯誤し、あとは自分のエッセンスを添えて作品を世に出した。すると意外なことに『編集がめちゃくちゃ面白い!』『編集者変わった? いいね!』といったようなコメントが相次ぎ、苦手だと思っていたジャンルの動画でも挑戦してみればなんとかなるものだなと嬉しく思った。

 入社して一カ月が経った時、私は珍しく本社とは別の場所にある撮影スタジオに呼ばれた。「わざわざ呼ばれるなんて、私はきっと何かやらかしたに違いない」と邪推しながら敷居を跨ぐと、中で言われたのは予想だにしていない話だった。
「今度演者にやってもらうホラーゲームなんですが、どういう方向性でやれば面白くなるのか考えたいので、ちょっとやってもらえませんか?」
 やる? 私が? ゲームを? このスタジオで?
 私は何が何だかよく分からないまま席に座らせられ、見たことも聞いたこともないホラーゲームをやらされることになった。しかも彼らは説明の後、さらによく分からないことを言っていたのだ。
「これ面白ければ配信したいと思うので、ゲーム画面と音声だけ録画させてもらっていいですか? なので普通に喋ってリアクションしながらやってもらえるとなんたらかんたら――」
 録画? 配信? 私が? ゲーム実況を?
 突然すぎてよく分からないのだが、どうやら私はテストプレイという名目でゲーム実況をすることになったのだ。顔が映るわけでもないので了承こそしたが、私は彼らに言っていないことがあった。ビビり王である私は、ホラーゲームが大の苦手なのだ。

 結局その撮影はゲームをクリアするまで数日に渡って続き、私はことあるごとにビビッて悲鳴を上げ続けた。
 そして満を持してと言うべきなのか不幸にもと言うべきか、私の叫び声だらけのみっともない動画が全世界に向けて配信された。
「こんなどこの誰かも分からない奴が関西弁でギャーギャー言っているだけの動画、きっと世間様はお怒りになるに違いない」と懸念していたのだが、何をどう間違ったのかシリーズで六十万回も再生されてしまった。

「これはいけるぞ!」と思った上層部は私に次々とゲームをやらせ、おそらく今現在で五百本は動画が配信されたのではないだろうか。

 何の因果か分からないが、私はこうして気付けばYouTuberになってしまっていた。おそらく合計千万回は再生されたであろう私の動画達は、今なおグーグル社のサーバー内で地味に生き続け、あなたのおすすめ動画に現れる日を息を潜めて待っている。

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明日は『VTuberを仕事で作った話』というエッセイを書きます。気に入っていただけましたらまたご覧ください。
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ありがとうございました。