地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

ゲームにハマりすぎた私が得たもの【水無のイラストエッセイ】

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 セーブが出来ないからと学校をサボり、全財産の全てをゲーム代に費やした時期もあった私が、大人になって気付いたことがあった。

  私が幼稚園に入った頃、我が家に初代ファミコンがやってきた。姉が誕生日だかクリスマスだかに買ってもらったようで、マリオやスパイアンドスパイ、ツインビーなどをやらせてもらった。
 そして小学三年のクリスマスプレゼントで私はスーファミを買ってもらったのだが、これが私の人生を大きく変える転機となった。正確には転機というより堕落への一歩とでも言った方が近いだろう。
 私はファイナルファンタジーやら餓狼伝説やらにたいそうハマり、寝ても覚めてもゲームのことしか考えられない子どもになってしまった。今でいうゲーム依存症である。

 そして小五の時、あまりに度が過ぎた私の生活程度を見かねたおかんによってゲーム機を全て没収され、一切のゲームを禁止されてしまった。
 これに私は憤死するのではないかと思うほどのかつてない怒りで猛抗議して暴れまくったのだが「これ以上騒ぐようならゲームは没収ではなく破棄する」と脅され、命より大事なゲームとそのセーブデータを守るため、私は表面上ゲームを自粛した。
 だが数週間にわたる捜査の末に隠し場所を探し当てた私は、バレにくいゲームボーイだけを抜き取った。敵の動向を観察し、可能な限り毎日元の位置に戻した。バレてはこの世の終わりだと、私は置かれていた細かい場所や向きまで正確に再現した。あの時の執念は凄まじいものがあったと、今思い返しても恐ろしくなる。もっと他のことに熱意を注げば大成していたかもしれないのに。

 そんな努力の結果(?)が実り、約一年後のクリスマスに私はゲームを返してもらえた。手紙には『やりたいのを我慢してよく言い付けを守りましたネ』と書かれていて、私は生まれて初めて罪悪感というものを覚えた。

 決められた時間でやるんですよとのルールと共に返ってきたゲーム機達だったが、私は深夜や休日など、親の目を盗んでやりまくった。あの時覚えた罪悪感などどこに行ってしまったのかというほど、私はゲームに対して前以上にクレイジーになってしまったのだ。

 そんな甲斐あって(?)か、私は朝起きられない人間になってしまった。遅刻欠席を繰り返し、親が働きに行ってから帰ってくるまでの間、ずっとゲームをした。授業中もずっとゲームのことばかり考えていたので、私の成績はおぞましい結果になってしまった。普通の人間であれば「このままではいけない」と当然危機感を抱く局面においても私はゲーム以外の全てのことに興味を持たず、自分を含めた何人たりとも私のゲームを止めることなど出来なかった。

 高校に入ってからは幾分かマシにはなったが、それでも世間一般の高校生の数倍はゲームをした。そして二十歳を過ぎた頃、ようやく私のゲーム熱は終点を迎えたのであった。

 人間もサルと同じだ。一度知ってしまったゲームの楽しさはおそらくどうしたって忘れられない。だが普通は自制心が働いて、勉強との両立を試みるのだ。私のようにタガが外れた人間には与えてしまったら最後、もうあとは本人が飽きるのを待つ他ないのだ。

 他人からの強制ではなく自分の意思でゲームを卒業した私は『いったいゲームは自分に何を与えたのか』と考えた。そりゃそうである。周りが受験だ恋愛だと人生をまっとうに歩いている間、私はゲームに狂っていたのだ。何か一つくらい他の人間よりも優れたものを得ていなければたまったもんじゃない。
 そして私は気が付いた。私が手に入れたのは『思考力』だった。私はファイナルファンタジーのように深いストーリーのあるゲームばかりしていたので、とんでもないほど考察をして楽しんでいたのだ。
「あれがこうなったからそれと結びついて、結果こういう結末になった」といったように、物事の本質を捉える目を手に入れたのだ。ゲームで言うところのユニークスキルである。

 そして今働いている映像制作会社は、私が昔好きだったゲームを作っている会社と一緒に仕事をすることも多く、誰よりも詳しいからと私が担当になることがほとんどだ。昔取った杵柄ではないが、昔過ごした『周りから見れば膨大な無駄な時間』が、今の私の役に立ってくれている。
 だがこうも思う。もし私の子どもが同じようにゲームにドハマりしたら、絶対に嫌だ。
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これからもエッセイを投稿していきますので、気に入っていただけましたらまたご覧ください。
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ありがとうございました。