地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

日本で四軒、カナダで三軒住んで分かったこと【イラストエッセイスト水無】

f:id:Essay_Miznashi:20200702172049j:plain

読み終わった後はぜひブックマークボタンを押して応援お願いします(‘∀‘)

 私はこれまで日本で四軒、カナダで三軒の家に住んだ。大阪の一軒家で産まれ、大阪のマンションで一人暮らし、カナダでホームステイ、カナダのシェアハウスを二軒、神奈川のマンション、東京のマンション。実際住むまでは分からなかったことをそれぞれ書いていこうと思う。

  私は大阪府阪南市の海抜七十メートルもの高さにある住宅地で育った。近所付き合いを嫌う人も少なくないが、幼馴染に恵まれた私は長く良好な近所付き合いには賛成である。もちろん関わらない方がいい人間もこの世にはたくさんいるので、人を見る目や付き合い方は勉強しなくてはいけないし、地域によってはある自治会を煩わしいと思う人も昨今少なくない。それでも生活音を気にしたり、その土地の一国一城の主となれる一軒家の快適さというものはそれらを補って余りあると私は思う。

 初めて一人暮らしをしたのは大阪の泉大津という、難波まで電車一本で二十分ほどの町にある鉄筋コンクリートマンションだ。五階建ての四階部分で、築深物件のためエレベーターが付いていなかったため、仕事終わりの帰宅はさながら魔城を見上げる村人のようだった。十畳のダイニングキッチンと六畳の洋室という間取りで、家賃は四万五千円だった。改装されていたのでぱっと見は綺麗だったが、風呂場はなんだか古い感じのタイル張りで、階段も廃病院のようだった。築深物件は家賃は安いが細かい部分に目がいってしまう。

 私がカナダでホームステイをさせてもらったのは、ホストファミリーが一階と二階に住み、留学生には地下があてがわれた家だった。べースメントと呼ばれる地下の部屋には一応天井近くに外が見える小窓のようなものがあったが、所詮地下は地下。どうも気分が沈んでよくない。留学生の泊まる部屋は四部屋あり、朝食は専用の冷蔵庫から好きなものを食べ(パサパサのパンと卵、バナナくらいしかないが)、夕食はホストファミリーと共に取った。
 初対面の人達とコミュニケーションを取るのが好きな好きにはいいかもしれないが、狭く深くが人付き合いのモットーの私は、外国人の留学生同士が談話室で話していても、部屋でダンゴムシのように一人丸くなっていた。
 ちなみに一月に大規模停電が起きた際「このままこの家にいたら死ぬから親戚の家に行きましょう」と言われた。寒冷地で暖房が切れると人は死ぬのだ。

 ホームステイをひと月で終えた私が次に住んだのは日本人限定のシェアハウスだった。日本人限定ということでさすがに綺麗だったが、日本人限定ということでルールが多かった。やれ友人は連れ込むな、週に一度はミーティングを行なうだと、いい意味でも悪い意味でも日本人感満載の家だった。
 ちなみに壁がベニヤ板かというくらい薄く、巷で囁かれているレオパレス伝説のように隣の部屋のティッシュを引き抜く音が本当に聞こえた。プライバシーもあったもんじゃない。

 べニアハウスを三カ月で出た私は、今度は日本人がいないシェアハウスを借りた。文化の違いを楽しもうではないかと思ったのだが、ここがなかなかハードコアだった。
 住んでいたのは女性が韓国人とウクライナ人で、男性がブラジル人とまさかの北朝鮮人だった。やはりと言うべきかこの北朝鮮人がクセ者で、ある日を境に彼の部屋からは常に銃撃戦の音と独り言が聞こえてくるようになった。外に出られる北朝鮮人ということで彼はおそらく裕福な家のお坊ちゃんのようで、一日中部屋に籠って戦争ゲームをしていた。控えめに言ってヤバい奴である。
 ブラジル人はよく部屋でマリファナパーティーを開催し、ウクライナ人は風呂からタオル一枚だけで出てきてはキッチンにいる私と遭遇して「WOW!」と言った。
 そしてそんな面子の家は想像よりもとても汚かった。ゴミはいまいち分別されておらず、生ごみが棚に入っていたりもした。若干潔癖気味の私は自分のスペースだけは綺麗に保ち、彼らが散乱させるゴミにはノータッチを貫いた。
 ちなみに彼らは自分のシャンプーやボディーソープをシャワールームの床に置きっぱなしにしていたが、自分の物に他人の汁が付くことを嫌った私は毎度部屋から持ち込み、理性の崩壊を防いだ。

 帰国後に住んだ神奈川県の横浜市では、分譲マンションの一階角部屋を借りた。分譲なのでオートロックに管理人在住と施設設備は良かったが、一階なので夏になるとたまに虫が出た。ジェイソンよりも虫の方が怖い私にとって死活問題だったが、虫が来なくなるスプレーなどの対策を徹底的にした結果、奴らの侵攻を食い止めることに成功した。部屋はキッチン五畳に寝室十畳で家賃は六万円。私の超巨大なバイクもタダで置くことができた。
 ちなみにベランダにたまに猫が数匹来て中に入れろとせがまれて可愛いなと思う反面、ベランダにうんこをされて「やっぱり一階はダメだな」と思ったりもした。

 そして結婚して今住んでいるのが世田谷区の五階建てマンションの最上階で、六畳のダイニングキッチンと五畳と六畳の部屋があり、家賃が十二万円。恐るべし世田谷区。だがここは今までで一番快適で、壁をどの部屋とも共有していない独立型の造りのため、こちらが気を付けさえすれば音で悩まされる心配がないのが最大の特徴だ。物音がすると集中できない私にとってこれ以上の環境はない。
 ちなみに部屋からは富士山や花火大会が見えるので、汚い壁の隙間からたまに下界を見下ろして人がゴミのようだと悦に浸る自分を見て「この程度で幸せなやつだな」と我ながら惨めに思うことがある。

 色々と住んでみたが、私が一番好きなのは普通の一軒家だ。もちろんタワーマンションに住んだことなどないのでそういったセレブリティーな感想は述べられないが、庭でバーべーキューが出来るくらいのラフな幸せというのが自分には合っている気がする。
――――――――――
これからもエッセイを投稿していきますので、気に入っていただけましたらまたご覧ください。
ブックマークや感想を残していただけると非常に嬉しいです。質問等もお気軽にどうぞ。喜んで返信させていただきます。
ありがとうございました。