地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

突然虫嫌いになった話【エッセイスト水無】

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 もしも今の人格を保ったまま小学生の自分にタイプリープなり転生なりをした場合、私はショック死をする自信がある。

  世の中には虫が気持ち悪い、嫌いだと言う人は数多くいると思うが、私はその中でもかなりの上位層に位置していると思う。私は昔から『ジェイソンよりバッタの方が怖い』と言っているように、バッタに触るくらいならジェイソンの近所に住む方がよっぽどマシだと思えるくらいに虫がダメだ。私はこの手の話題に関しては文字で見るのもお断りなので、読者のみなさまが気持ち悪くならないようになるべく詳細は書かないので、少しお付き合いいただきたいと思う。

 おぞましいことに、かつては私も虫が大好きだった。こうして文字に起こすだけで鳥肌と悪寒が凄いので細かい描写は差し控えるが、幼稚園の頃に近所の空き地で幼馴染の女の子と虫取りをして以来、私は昆虫採集に夢中になったのだ。下校時には道中の草の分け目を覗き込み、休みの日には虫取り網と虫かごを持って近所中の空き地を闊歩して愛するペットを捕獲してきた。そうして私の手に落ちた虫達は来賓と呼んでもおかしくない待遇で、高さ百二十センチほどの下駄箱の上に飾られた。彼らの家は幅五十センチ、高さ四十センチはあろうかという巨大な透明ケースで、私はその中に草や木を立体的に配置し、昆虫リウムとでも呼べそうな豪華な住処を提供した。
 歳の離れた二人の姉の片方は私のその趣味を特に気に留めていた様子はなかったが、もう片方の姉は帰宅すると毎回リンリンだかガサゴソだかというおぞましい音を立てて出迎える来賓に対して早々に限界を迎え、自分の視界に入る場所に虫を置くなと言ってきた。私はせっかく捕まえてきた虫達を常に見える場所に置きたかったし、そもそも虫が気持ち悪いなどという概念そのものがなかったので、頑なに彼女の申し出を拒否し続けた。
 するとどうだろう、優しかった姉の態度が虫の話以外の時も段々と冷たくなってくるではないか。私は多少の居心地の悪さを感じながらも、その後もせっせと彼女の言う気持ちの悪い生物を増やし続けた。
 そしてある日、ついに事件が起きた。どうやら虫かごの蓋が開いていたらしく、タイミングの悪いことに姉が帰宅した時、玄関を飛び跳ねていたバッタと対峙してしまったのだ。この世の終わりのような叫び声が家の中どころか近所中に響き渡り、驚いた家族や近所の人達が、玄関先で腰を抜かしている姉の元へと駆け付けた。近所の人達に何もないことを詫びてひと段落着いた後、私が「や~ごめんごめん、蓋閉めるの忘れてたみたい。でも虫ぐらいでそんな怒らんときや~」とおちゃらけて言ったところ、ついに姉の堪忍袋の緒がもの凄い音を立てて弾け飛んだ。
「あんたは好きかもしれんけど、私はほんまに大嫌いやねん! そんな気持ち悪いやつを下駄箱の上みたいなすぐ目に入る場所に置くの今すぐやめて!」
 姉は半狂乱で私の趣味の全てを否定した。私は彼女のあまりの剣幕にたじろぎ、虫かごは玄関の外の暗い場所置かれることになった。当時はなんて酷い女かと姉その一を呪ったが、今思い返すとよくもあれほどの虫パラダイスが築かれた玄関を一定期間我慢してくれたものだ。次に会ったら改めて謝罪しようと思う。

 しかし私の身に何が起こったのか覚えていないが、中学に入った途端、私はちょっとやりすぎなのではと誰しもが思うほど極端な虫嫌いになった。生物の教科書は中身が見えないようホッチキスでバチバチに留め、アニメでセミが木に止まってるシーンなんかも秒速で目を逸らし、次のシーンに変わったら教えてくれと周りに頼むほどになっていた。
 冒頭に言ったとおり、今はさらに虫嫌いが加速しており、ドラゴンボールで願いが三つ叶うなら、お金を貰ってギャルのパンティーを貰って、最後に虫をこの世から絶滅させてくれと頼むだろう。

 時と共に人は変わるとよく言うが、私の虫嫌いほど正反対な変化を遂げた人も珍しいのではないだろうか。
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これからもエッセイを投稿していきますので、気に入っていただけましたらまたご覧ください。
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ありがとうございました。