地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

取り放題の極意【水無のイラストエッセイ】

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 先日、妻が買い物から戻ってくるなり「そこのスーパーでじゃがいも詰め放題二百円っていうのをやってる!」と騒ぎ立てたので、私は火事場に急行する消防士のように店へと急いだ。

  現場に到着した私は火元はどこだと探したが、人だかりがない。疑問に思いながら狭い敷地を歩き回っていると、ポツンと無人の特設コーナーが設置されていた。こんな超お得なイベントなのになぜ誰もやろうとしないのだろう。めちゃくちゃ不味いことで有名なのかと勘ぐりながらも私は手を消毒し、ビニール袋を一枚引き抜いた。

 こういう詰め放題は『いかに無駄な空間を作らないか』が勝負のカギになってくる。私は大きいじゃがいもの横には小さめのじゃがいもを置き、素早い手捌きでびっしりと隙間なく詰めていった。
 すると直後におばちゃん二人組がやって来てそのうち一人がやり始めたのだが、これがよろしくない。ビニールを引き抜いたらすぐに二人で数を数えながらドカドカとノープランで詰めていき、二十七個も入ったと喜んでいた。
 おばちゃんよ、詰め放題ではまずビニールに両手を突っ込んで限界ギリギリまで伸ばしてから入れ始めるのがセオリーなのだ。おばちゃんのビニールは固く伸縮性がないが、私のビニールはデロンデロンで破れる一歩手前だ。そして袋を伸ばしたら袋にダメージを与えないよう丁寧に入れていく。これだけで随分と違う。

 私は結局三十七個詰めた。今じゃがいもが謎の高騰期に入っており、近所のスーパーでは一個九十円という殺人的な値段で売っているなか、一個あたり五.四円という破格の買い物だ。レジに持っていくと店員のおっちゃんが「すげえ……」と脱帽し、併設されているカフェで茶を飲む人々は私の抱えるじゃがいも畑をチラチラと見ていた。
 地元の大阪でこんな凄まじいイベントを開催したら人が殺到すると思うのだが、東京の人はいったい何と戦っているのだろう。気になるのならやればいいのに。

 私は以前もドン・キホーテで開催されていた『フライパンにフルーツゼリー積み放題』という謎のイベントでレコードを更新したことがある。
 それはよく百円ほどで売っているフルーツゼリーをフライパンの中で一列に積み上げたら、フライパンを持ち上げて隣のかごに入れる、という内容だった。私は息まいて挑戦したのだが、いざやってみると想像以上に不安定で難しい。デカデカと書かれている現在の記録が十個なので、それは超えたい。
 そして私はサクランボやビワなどの重量がある果物の位置を傾きの計算に入れるという気持ちの悪い気合の入れ方で十二個も積み上げ、無事落とさず全てかごに入れてレコードを作った。

 しかし意地になって十二個取ったはいいもののこんなにどうしようと思っていると、近くを通った子どもが「いいなやりたい!」と言うも母親に「ドンキで二千円買わないと出来ないんだよ。諦めて」と断られていたのを見て、持っていたゼリーを二つあげた。少年はたいそう喜んで感謝してくれたが、私がこのイベントをやりたいがために無理やりドンキで二千円も散財したみっともない大人だと知った場合、はたして彼と母親はあの眩しい笑顔を変わらず向けてくれるだろうか。
 親はどうしてこんな才能ばかりを与えたのだろう。

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