地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

毎年恒例の川キャンプ【水無のイラストエッセイ】

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 前回“最高のプールを求めて”というエッセイでも書いたとおり、私は小学生の頃、親によく川キャンプに連れて行ってもらった。夏休みが始めると宿題の計画よりも先に「キャンプいつ行くん!」と親にせがんだ。キャンプは毎年の恒例行事であり、毎年の楽しみだったのだ。

  基本的にいくのはいつも和歌山のキャンプ場で、途中何度か“川底を掘れば温泉が出る”という不思議な川湯温泉に浮気したものの、最終的に落ち着いたのは車で一時間半ほどの場所にある有田の遠井キャンプ場だった。

 遠井キャンプ場を流れるのは有名な有田川で、比較的流れがゆっくりとしていることから小さな子どもを連れた家族も多く来ていた。我々はいつも到着するとテントを張って、その中にクーラーボックスやバーベキューコンロなどを運んだ。夕食はいつもバーベキューなのだ。
 それらを運び終えると車のカーテンを引いて水着に着替え、ようやく川へと向かう。八月の真夏日であっても川の流れは冷たくて、つま先からゆっくりと入らなくては心臓が風邪を引いてしまう。私はただでさえ人の五倍は風邪を引きやすいので、より慎重になる必要がある。一度浸かってしまえばもうこちらのものだ。流れに気を付けながらゆっくり遠くまで進み、バタ足で流れに逆らって泳いだり、とっつぁんに浮き輪で引っ張ってもらったりして遊ぶ。川幅はそこまで広くないので端まで行けば小さな飛び込みスポットがあるのだが、その付近だけ流れが急に強くなっているのでよりいっそう注意して進まなくてはならない。

 川で遊んだことのない人は想像しにくいかもしれないが、緩やかなキャンプ場の川であっても、油断すると履いているサンダルが三秒で五メートルは流されてしまうほどの流れがある。“川では子どもから一秒たりとも目を離すな”“子どもが流されてもすぐに捉まえられるよう川下に立て”と言われることもあるように、一瞬の判断が大事故に繋がる危険性があるのだ。実際私は高校の時に友人達と川に遊びに行って、子どもから目を離した親が小学校低学年くらいの男の子が流されてしまったと叫び、救助隊が出動するという場面に遭遇した。遠くから見る分には自然は優しいが、一歩足を踏み入れると自然は牙をむくことが往々にしてある。そして私もある年のキャンプで、自然の恐ろしさを身をもって体感した。

 楽しみにしていたキャンプ当日、阪南市を出る頃はじつによく晴れたキャンプ日和だった。しかし遠井キャンプ場に着いてテントを設営していると徐々に雲行きが怪しくなってきて、早めのバーベキューを終えた直後から雨が降り始めた。
 川に雨が降るとどうなるのか。それは増水である。どうしようかと決めあぐねていると夕方に場内放送が流れた。「増水の危険性があるので川べりにテントを張っている人は撤収して高台の駐車場に避難してください」
 我々は猛ダッシュでテントを撤収し、放送に従った。かなり強めの雨が降り始めていたので、タウンエースのトランクを開けて屋根代わりにし、テントを畳むと安全な駐車場に避難した。
 まだ陽も落ちていない時間帯に車に押し込まれた我々はどうしようかと困ったが、私がトランプを持っていたので三人でずっと大富豪をした。おそらく四時間はやったのではないだろうか。帰るという選択肢もあったのだが、この高さなら危険はないし、とんぼ返りもシャクだったので留まることにしたのだ。
 結局雨は次の日も上がらず、川にはほとんど入れなかったのだが、私達の記憶に一番色濃く残っているキャンプはこの雨の日のことだ。親子で四時間もトランプをするという機会もこんな事態に陥らないと絶対にないので、たまにはアクシデントも悪くない。

 その翌年以降も私は夏が来るとキャンプに連れて行ってもらった。仲のいい従兄を誘ったこともあった。中学二年になると親と出掛けることが恥ずかしくなって行かなくなったのだが、密かに行きたいなと思っていたこともある。正直に言っていたら親は喜んだかもしれないが、そういうことを言えるような年頃ではないのだ。しょうがない。

 今はまだ東京にいるので車を持ったりキャンプをしたりというのは現実味がないが、数年以内に大阪に戻り、車を買ったら娘をキャンプに連れて行きたい。夏の思い出というものは、いつまでも色あせない特別なものになるのだから。

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