地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

唯一好きな習い事~バレーボールでゴリラと戦う~【水無のイラストエッセイ】

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 スイミング、そろばん、習字、公文と地獄のような習い事をやらされ、すっかり習い事恐怖症に陥っていた私だが、小五の時に親友からバレーボールのクラブチームに誘われた。

  私の小学校はほとんどの小学校の例に漏れず放課後に部活がなかったのだが、そのバレーボールクラブは小学校の体育館で夕方から一時間半の練習を週に三回ほどやっているとのことだった。

 私はバレーボールのバの字も知らない男だったのだが、親友が面白いというので見学に行ってみることにした。
 いつも知っている明るい体育館と違い、日が暮れて煌々とライトに照らされたコートの上には二十数名の男女がおり、そのうちの八人ほどが同級生だった。

 私は本当にどんなスポーツかということさえ知らなかったので隅っこで見学していると、どうやらネット越しに相手を攻撃する凶悪なスポーツだということが分かり、普段中当てやドッヂボールで荒ぶっていた私はすぐに興味を持った。
 家に帰るとおかんが「バレーどうやった?」と聞いてきたので「やりたい!」と言った。勉強ではないが私が自分から習い事をしたいと言うなど今までほとんどなかったため、おかんはどこか嬉しそうだった。

 バレーボールはサーブを打つ時以外ボールを保持することがない変わったスポーツで、運動が得意だった私もはじめは苦戦した。レシーブをすると明後日の方向へ飛んでいくし、何より痛い。格闘技じゃあるまいし、痛みに耐えるスポーツだなんて聞いていなかった私は早くも辞めたい気持ちが高まったが、すぐに辞めては誘ってくれた親友に申し訳ないと思ってしばらく耐えていると、腕の皮膚が強化されて痛みを感じにくくなっていった。ゲーム脳の私は「現実でも防御力って上がるんや!」と大喜びで、その日からしばらく腕をペチペチ叩いて経験値を溜めるという奇行に走った。

 数カ月経って六年生になる頃には私も立派なバレーボーラーとなっており、初めて試合に出させてもらうことになった。とは言ってもまだ全然上手くはないし、身長も豆粒みたいだったので戦力と呼ぶにはほど遠かったが、六年生(最高学年)というアドバンテージが先人の下級生を押し退けたのだ。だがそれは勝ちに拘りすぎない監督の方針なので、私を恨まないでほしい。

 私のチーム“舞クラブ”は弱くはないが強くもないといったレベルで、一応大会の予選には毎回出ているとのことだった。
 初めて立つ広い体育館はチキンの私を震え上がらせ、私をアババババと慌てふためかせる。そしていざ試合が始まると、その戸惑いはさらに私を混乱させる。一瞬の判断が必要なバレーボールにおいて、天井の高さや体育館の広さが普段と違うとボールと空間の位置把握に大きな支障が出る。
 私は普段はしないようなミスを連発し、顔面蒼白になっていた。
「大丈夫大丈夫! 慎重に!」
 下級生や試合待ちの女子が応援してくれているが、私の脳みそは渦巻の中に放り込まれた糸くずのように為す術なく混乱し、結局試合は負けてしまった。

 謝ることが大嫌いだった私だが、さすがに今日のことは自分が悪いと思い「ごめん」とみんなに謝ったが、周りは笑顔で「初めての試合なんやから気にせんくていいよ! 次は勝とな!」と言ってくれた。
 ガキ大将だった私はこの時初めて足を引っ張ることの怖さと恥ずかしさを学ぶと共に『スポーツをすると心まで綺麗になれるのか……』と子どもながらに思い、翌日からなおいっそう練習に身を入れた。

 その後も一進一退の成績を収めていた我々のチームだったが、一度だけ地区大会二位になって本戦に出場することになり、なみはやドームというバレーコートが五面もある大きな会場で試合をした。結果は東百舌鳥ゴリラーズという点を取るたびに雄叫びを上げる強烈なインパクトと強さを誇るチームに惨敗したのだが、大会場で試合をしたという経験は貴重なものになった。

 その後も私は中学でもバレー部に入り、高校ではバレー部を作った。そして今では月に数回、世田谷区のバレーボールサークルに参加している。
 全然上手かったわけでもないし向上心もさしてなかったのだが、やはり自分の意思でやると決めたものというのは長続きするものだ。

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