地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

音の無いバンドのボーカルになった話【水無のイラストエッセイ】

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 音の無いバンドとはいったい何だろう。私がボーカルを務めるバンド『ザ・ミリタリーズ』。そのあまりに異様な活動内容に、フロントマンの私でさえ時たま戸惑うことがある。

  私はこれまで、大阪でいくつかのバンドを組んできた。そのほとんどがエモと呼ばれるジャンルで、楽器隊はかなり激しいのだがボーカルラインはどこか切なく、その切なさに拍車をかけるようにピアノやシンセサイザー、高音のギターが綺麗な音を付け加える――といった音楽性で活動してきた。

 そして六年前、カナダのトロントで組んだバンドが今なお活動を続けている『ザ・ミリタリーズ』だ。冒頭で書いたとおり、このバンドには音がない。バンドで音がないと言うとたいていの人は「頭がおかしいのか」と思うだろう。事実、頭はおかしいと思う。
 ではその頭のおかしいバンドはいったい何をしているのかと言うと、ボーカルの私、ギターのアキラミチル、ベース(リーダー)のTaKumiが一丸となって生み出したCDジャケットと曲名、歌詞、コンセプトから視聴者に音楽を想像させるというものだ。この説明を受けたおおよその人間が取る行動は、頭が痛くなるか、我々の頭を疑うかのほぼ二択だ。普通に考えてまったくもって意味不明なアート活動である。
 これまでにリリースした作品はシングルが七枚、アルバムが三枚。全ての曲にコンセプト等の情報が密に考えられており、尺まで決まっている。そこまでやるなら本当に曲を作ればいいのにと思われるかもしれないが、これまで別々で音楽活動をしてきた三人のメンバーはこのバンドで自分達のアート性を高めるため、絶対に音は作るまいと心に決めているのだ。

 一番メインとなる活動はジャケット写真の撮影だ。毎回綿密に計画を練り、ときにカナダの首都オタワへ、そして栃木の洞窟へと、尋常ではないやる気でロケを敢行している。
 こと写真においてはメンバーそれぞれこだわりがあり、私は撮影や編集の技術面を、アキラミチルはデザイン面を、そしてリーダーのTaKumiはいかに自分が美しく写るかを計算する。一見するとリーダーはただの役立たずのように思えるが、そのナルシストぶりは目を見張るものがあり、彼が監修することによって意外と作品の質が向上するのだ。

 この活動の面白いところは、一つの曲――例えば五枚目のシングル『作戦決行レクイエム』であっても、メンバー内でさえ想像する曲調がまったく異なるという点だ。歌詞や尺は決まっているのでボーカルラインが一部似たりすることはあるが、全体の曲調で言えばいつもまったく違う曲になる。

『曲を作るのは聴く人間』かつてアキラミチルはプロモーションビデオ内でそう発言していた。そんな音楽活動をしている人間は、我々を置いてこの地球上にはいないだろう。そしてそのア-ト活動に共感し、支持しようと思う者もまた……。

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