地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

酒を飲まない人生【水無のイラストエッセイ】

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「最近の若者は酒は飲まないタバコは吸わないパチンコは打たない車は乗らないと、生きていて楽しいのか」とおじさん連中は言う。だが私はめちゃくちゃ楽しい。

  私はバイクにこそ乗ってはいるものの、その他のおじさん達が言う娯楽のほとんどに興味がない。興味がないどころか嫌いだ。酒は不味いしタバコは臭いしパチンコは臭くてうるさいし面白くないし負けたら死ぬほどムカつく。
「タバコやパチンコはいいとして、酒も飲まないと楽しくないのでは?」と同世代から言われることもあるが、私は圧倒的にジュースの方が好きだし、なにも飲まず嫌いで酒を飲んでいないわけではない。

 二十代前半、私は飲み会に行くと甘いお酒くらいなら飲んでいた。カシスオレンジや梅酒ソーダといったような“女の子が好きなお酒”だ。中学生の頃は歳の離れた姉二人がディタというライチのお酒をグレープフルーツジュースで割ったものを家で飲んでいるのをたまに一口貰っていたが、酒臭いことを除けば味自体は美味しかった。

 私はアルコールのにおいがするとダメなのだ。カシスやオレンジの味が美味しくても、アルコール臭がすると一気に気分が悪くなる。なので同じカクテルでもアルコール臭の強いカルーアミルクはダメで、酎ハイやサワーも臭くてダメ、その他の日本酒ビールウイスキーなどは言うまでもない。
 過去に一度大阪のオシャレなイタリアンレストランでサングリアを飲んだ時は「こんなに美味しいお酒があったのか」と感動し、水無家で唯一酒好きのとっつぁんに話したところ大喜びで甘そうなフルーツワインをいくつか買ってきてくれたがどれもアルコール臭がキツく、その後どこの店で飲んでもあの味には程遠かったため、あれは奇跡の一杯だったのだと諦め、これ以上サングリアについて研究するのはやめにした。

 私が本格的にお酒をやめたのはカナダでの留学を終えて帰国した二十六歳の頃だった。それまでも三杯飲むと気分が悪くなってなんばの心斎橋筋商店街でうずくまるようなことも何度かあったのだが、私はこの年に最悪の光景を目にしたのだ。それは大手家電メーカーのブランドビデオなどを作っていた映像制作会社での飲み会で起こった。
 先輩社員が羽目を外して飲みまくり、汚い話で申し訳ないが料理の大皿にゲロリンしたのだ。周りも慣れっこなのか「あはは~お前飲みすぎらって~」と言ってその器をゆさゆさとゆすっており、私はこの世の地獄絵図だと思った。さらに帰りの電車で酔っぱらって床で寝るサラリーマンを見たのが決定打となり、私は酒に対して強烈な嫌悪感を覚えてしまったのだ。
 それは「どういう人が嫌いか」と聞かれたら「酔っ払い」と答えるほど重症だった。

 その日を境に、私はただの一滴もお酒を飲まなくなった。会社にはアルコールアレルギーなのでと言っているので飲まないし、いい感じのフレンチレストランに行っても頼むものは季節のフルーツソーダ。友人達と鳥貴族に行っても私は大好きなミックスジュースを美味しい美味しいと言って何杯も頼むし、家で酒を飲むという習慣はこれまでもまったくなかった。なので私が好きなアルコールと言えばコロナ対策の手指用アルコール除菌液だけになった。

 私はコーラで酔えるほど元々炭酸ジュースが好きで、今でも妻の実家に遊びに行くとコーラを準備してくれている。夏場にみんなが家で冷えたビールを飲んで「クゥウウ!」っとやる代わりに、うちには三ツ矢サイダーや各種炭酸水が常備されている。酒の代用品などではなく、私は圧倒的に炭酸飲料の方が好きなのだ。

 そんな私だが、友人と遊びに行くときはわりと重宝される。絶対に一滴も飲まないので、奴らを車で運搬してやれるのだ。悪酔いしないのなら好きに飲んで貰ってかまわない。酒をいっぱい飲んだのなら彼らはその分多めに出すし、私は家まで送ってやる。いい関係性だと、私は自分の友人を誇りに思う。
 過去にバンドの合同打ち上げで「一人だけ飲まねーと盛り上がんねーんだよオラ飲めよ」と言ってくる奴がいたので、対バンNGにした。飲みたいなら勝手に飲め。そんな不味くて身体に悪くて気分が悪くなるものを私に勧めてくるな。

 酒好きからだいぶ嫌われそうな内容になってしまったが、世の中には豚肉が好きな人もいれば、宗教上死んでも食べない人もいる。酒だって同じだ。飲みたきゃ勝手に飲めばいいし、人に強要すべきものじゃない。私にとって鳥貴族で飲むべきはミックスジュースだが、人によっては食事中に飲むようなものではないと言う。私はその意見も分かるので、美味しいから飲んでみろとは言わない。
 好きなものを食べ、好きなものを飲む。それさえ叶わない食事の席なんて、楽しくも何ともないじゃないか。

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