地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

ちょっといいカメラのススメ【水無のイラストエッセイ】

f:id:Essay_Miznashi:20201002111156j:plain

 写真に興味を持ったのは高校生の頃だった。
 アルバイトを始めた私は、写真を撮っておくと後で見返した時に面白いのではないかと思い、近所のコジマ電気で一万五千円ほどの安いコンパクトデジタルカメラを買った。値段からも分かるように全然高機能なモデルではなかったが、それでも使い捨てカメラと比べると断然高画質だし、光学ズームが付いているのは革命的だった。そして何より感動したのは撮った写真をその場ですぐに見られるという点だった。

  カメラを購入した私は早速学校に持って行き、様々な写真を撮った。授業中の写真、昼休みの写真、自分達のバレー部の練習風景。女バレも勝手に撮った。
 さらに休日もアメ村に行っては三角公園で撮り、川で遊んでは水着で撮りと、私は完全に記録係と化していた。当時はパソコンに撮影データを移して保存という概念がまったくなかったので、カメラのキタムラ阪南店で印刷しては学校に持って行き、みんなで写真を見た。

 高校卒業後は専門学校で大きなビデオカメラを振ることになり、写真とは違うが撮ることに変わりはなかったのでそれなりに楽しんでいたのだが、授業の一環で行ったライブ会場のカメラチームが体育会すぎてドン引きした。
 四台のカメラの映像が一カ所に集約し、それをディレクターがリアルタイムで切り替えて会場に一つの映像として映し出しているのだが、スタッフブース内で聞こえてくるのはその標準語のディレクターがインカムで叫ぶ怒号ばかりで地獄のようだった。
「おい二カメ! 今欲しいのはその画じゃねぇんだよ! なんで分かんねーんだ使えねーな!」「「お前らセンスねぇんだよ! 辞めちまえ!」などなどとにかく凄まじく、死んでもこんな職場で働きたくないと思った私はカメラマンになるという選択肢を最初に捨てた。

 だが趣味で写真を撮るのは別だった。私は二十五歳の時、何かに引かれるように「一人でカンボジア旅行をしよう」と思い立ったのだが、海外旅行には良いカメラが必要だと思い、ヤマダ電機ソニーのミラーレスカメラを買った。ミラーレスとはコンパクトボディながらもレンズが付け替えられ、写真の出来栄えはプロが使う一眼レフカメラとさして遜色のない性能という、いいとこ取りのカメラなのだ。

 私はヤマダ電機から家に帰り、早速ベランダから外の夜景を撮ってみたのだが、その圧倒的な綺麗さに衝撃を受けた。今持っているデジカメやスマホではただの真っ暗闇なのに対し、肉眼で見ているような藍色の空が撮れていたのだ。この衝撃は使い捨てカメラからデジカメに乗り換えた時に匹敵するか、あるいはそれよりも上だった。なんだこの写真は。画像販売サイトで売っていてもおかしくない出来栄えじゃないか。

 では具体的にいいカメラだとどんなふうに違うかという話だが、例えば同じ場所で同じ画を撮ったとする。基本的にいいカメラの方が画素数が高いのでより高画質な写真が撮れると思われがちだが、じつは画素数の違いに関しては液晶画面で見たり普通の写真印刷くらいではそこまで劇的な差は感じられない。
 分かりやすい違いは明るさと背景のボケ方ではないだろうか。ミラーレスや一眼はレンズが良く、中のセンサーも大きいので、オートでもとても明るくくっきり撮ることが出来るのだ。さらに自分で明るさを調整できるので、安いカメラじゃ撮れないオーロラや星空だって意のままにその輝きを収められる。そして背景はボケていればボケているほどなんだかいい写真に見えるのものなのだ。

「こんな……こんな写真が撮れるだなんてなんてこった!」
 ミラーレスを手に入れた私は自分が天才カメラマンになったかのような気がして有頂天になり、家族や友人に自分の撮ったバイクやリップクリームの接写写真などを送りつけてはミラーレスの布教活動を行なった。私ならそんなちょっと背景がボケているだけの汚い使いかけのリップクリームの写真など送られてきても困るのだが、彼らはいい人なのかアホなのか「これお前が撮ったん? すげえ! ヤバいなプロやん!」と私を調子づかせるようなことを言ってくれた。

 さらに二年前、私は誕生日プレゼントで妻から単焦点レンズを貰った。これは動いているものに焦点を合わせるのは至難の技だが、人物のポートレートや止まっている物を撮るとエゲつないくらい背景がボケるレンズだ。私は今、これで娘の写真を撮りまくっている。

 近年、スマホのカメラが凄まじく綺麗になってきているが、きちんとしたカメラと比べるとやはり差は歴然だ。私のカメラは手振れ補正があまりイケていないので動画はiPhone11で撮っているが、出掛けるとなるとiPhone11では力不足だ。
 型落ちしたモデルなら六万円もあればいいカメラが買えるので、興味がある人は挑戦してみたらいいと思う。究極を求めなければ操作だってまったく難しくないので、写真はいい趣味だと思う。

ブックマークしてくださるとめちゃくちゃ嬉しいです。
毎日19時に面白おかしいエッセイを投稿中!Twitterで投稿を告知していますので、フォローいただければ相互させていただきます。 足をお運びくださりありがとうございました。