地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

ナメてた。離乳食は超大変だ……【水無のイラストエッセイ】

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「離乳食? 米軟らかく煮てあげりゃいいんやろ?」
 おそらく私ほど離乳食をナメくさっていた男もいないのではないだろうか。私は軟らかければいいとさえ思っていたのだが、その実態は大きく異なった。

  当初四カ月だけの予定だった育休がコロナ禍で延びに延び、このままいくとおそらく復職は十月になるだろう。日々私は日中数時間娘の面倒を見て、その他にも洗濯や買い物、夕食の準備、皿洗いなどの家事全般を行なっている。
 ということは、生後およそ半年前後から始まる離乳食も私が作ることになる。私はまったく知識がないので、数多の育児本を愛読している妻からおすすめの離乳食本をピックアップしてもらい、目を通した。するとどうだろう、そこには料理が大嫌いな私にとっておぞましい内容の数々が記されてあった。

・米やうどんなどの炭水化物を一種類
・豆腐やヨーグルトなどのたんぱく質を含んだものを一種類
・野菜や果物などのビタミンを含んだものを二種類
・これらを毎食与える。さらに月単位で段階的に硬く、一粒ごとのサイズを大きくしていく必要があり、なるべくたくさんの種類を食べさせなさい
・水は一度沸騰させたものを冷ましてから飲ませなさい

「うそん……」

 赤ちゃんの食事に関しては『母乳に必要な栄養がたっぷり詰まっている』と聞いていたので「離乳食なんか、食べるのに慣れるのが目的なんやろ」ぐらいにしか思っていなかったのだが、じつは生後半年ほど経つと母乳だけでは成長に必要な栄養素が不足してくるので、食事で補わなければならないと本に書いてあるではないか。
 私は毎日献立を考えるのが全家事の中で一番嫌いで、二人して育休を取りはじめてからの我々の夕食は、妻が献立を考えて私が作るというやり方をしてきた。そして今、そこに離乳食も加わってきた。妻や子どものためとは言え、毎日献立を考えると言うのは私にとって不可能なことだ。サルに因数分解をやらせようとするようなものなのだ。頭がおかしくなる。

 なので献立を考えるのは妻に任せ、私はそれらを作って冷凍したりするよう役割分担をした。作るくらいならなんとか出来る。冷凍に関してだが、真面目ないとこが夜な夜な「うう……離乳食作るのつらいよ……」と泣きながら眠たい目をこすって都度離乳食を作っていたというエピソードを聞いていたため、製氷皿に一回分ずつの量を冷凍しておくといいということを知っていたのだ。

 最初の一カ月は食べられるものも少ないし一日一回だけなので大したことはなかったのだが、二カ月三カ月と経つにつれて妻がやたらめったら本に付箋を貼り、七倍の軟らかさのおかゆの作り方や今食べさせていい食材などのメモをあちらこちらに貼りまくるという戦法を取り始めたため、私は何を見たらいいのか分からなくなり、彼女の用意した物を一切見なくなった。
「こんなにめちゃくちゃに散逸していたら本を読むのと変わらない。まとめるなら『これを見ればすべて分かる』という物を用意してくれ」と伝えたところ、彼女は頑張りが無駄になったとショックを受けていたが、私だって結局自分で一番やりたくない献立を考えていたのだ。情報整理をするなら相手の役に立つ物を用意してほしい。

 気疲れした私は二人の姉に相談した。彼女達は計五人の子どもを育てている最中の一番頼れる先輩なのだ。すると彼女達は口を揃えて「本を鵜呑みにしてはいけない。本というのは目立つ立派なものを作っているから本になっているのであって、あんなものを毎食用意している家庭なんてどこにもない。半目で見るくらいがちょうどいい」と言った。
 それを聞いて心のつっかえが取れた。私はどうも本に書いてある内容が信じられず、勝手に楽をしていたのだ。
 本ではやれ煮汁を追加しろだの鍋で煮込めだのと書いてあるが、シリコンスチーマーに入れてレンジでチンすれば楽だし栄養素も失われないではないか。もし微妙な味の違いで食べないというのであれば考えものだが、娘は何も嫌がらずにバクバク食べる。なので今や本は食べさせていい食材のリストと献立の参考例くらいしか見ていない。作り方を忠実に守っていると病んでしまう。あれは沼だ。

 私は今、三、四日に一回離乳食を作っては冷凍するということをしている。なるべく多くの食材を食べさせた方がいいとのことなので、ササミやナスなど、自分達が普段あまり食べないものも買って用意している。好き嫌いの多い子になってしまっては大変だ。
 さらにポイ活で当たった一万円分の通販サイトのポイントでキューピーの離乳食を買った。疲れた時はこういう物に頼るのもいいではないか。一口食べてみたがどれもじつに美味しい。

 ナメまくっていた離乳食だが、想像以上に大変だった。さらに良かれと思って読んだ本の通りにすると余計に疲れることも分かった。なので手を抜いてしっかりと作れるやり方を最初に調べてからやり始めた方がいいと思う。
 全ては子の成長のためだが、親だって人間なのだ。頑張りすぎると、疲れる。

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