地獄の画家卍イラストエッセイ水無

俳優として全国CMで主演を務め、入社した映像制作会社で「喋りが面白いから」となぜかYouTuberにさせられてうっかり1,000万回も見られてしまう。地獄のようなイラストを添えたエッセイを毎日公開中。書籍化したいので、皆さん応援してくださいね☆

ドン・キホーテのアルバイト裏側【水無のイラストエッセイ】

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 日本の激安ジャングルことドン・キホーテの大阪道頓堀店で、専門学校に通う二年間私はアルバイトをしていた。担当は一階のアパレルコーナーで、服や下着、スーツケースなどだ。無給でもいいから働きたいなどと今では考えられないようなことを思えるほど、ここでのアルバイトは楽しかった。

  九時だか十時の開店時間になると店頭に激安ワゴンを並べ、服を綺麗に畳んで回る『メンテ』をする。その後はジャンジャカ届く納品物を捌き、担当箇所の発注をする――というのが一日の主な流れだ。私はこのメンテが結構好きで、服屋の店員さんが立ったまま畳んでいるのを見たことのある人も多いと思うが、まさにあれである。高校の友人と一緒に働いていたので、どちらが先に一列畳み終えるかとよく勝負をしていた。

 ドンキの納品捌きは戦争だ。連日強烈な量が届くので、全力で取り組まなければまず終わらない。しかし届いたものを単に出すだけではなく、一点一点防犯タグやらシールを貼り、値段までラベラーで貼らなければならないので、とにかく時間が掛かる。
 人間の集中力というのは凄まじいもので、この納品捌きはノってくると恐ろしいスピードを叩き出すことがある。だが「速い! 速い! 今めちゃくちゃ速い!」と周りがスローになるレベルの速度で納品を捌いている時にかぎって、あの音が鳴るのだ。
 キンコーン「アパレル担当の方ー! 一階八レジまでお願いしまーす!」
 服のタグが外れていてレジで値段が分からないということが頻繁にあり、その都度作業を中断して駆けつけなければならないのだが、最後の一点などで値段がまったく分からない場合はカタログや事務所のパソコンで調べなければならないので、お客をめちゃくちゃ待たせることになる。調べても分からない場合は最悪ニュアンスで決めていたのだが、あのシステムは今はどうなっているのだろうか。
 さらに「一階自転車販売お願いしまーす!」「レジヘルプお願いしまーす!」と次々と呼び出しが掛かるので、思うように作業が進まないのだ。

 ドンキの倉庫は運動神経が悪いと商品が出せない。消防法を完璧に遵守しているのだが、とにかく倉庫が巨大で、果てのない高さの棚をよじ登って段ボールを下ろす必要がある。そんな場所では黒い奴らと遭遇しそうなものだが、私は一度も出会ったことも出たという話を聞いたこともない。意外と清潔に保たれているのだ。

 私が好きだったの仕事は二つあり、一つは館内放送だ。推したい商品をアナウンスするのだが、場所はお笑いの聖地大阪なんば。面白くない放送などやる価値がないと思っていた私は、出勤するとほぼ毎日、考えてきた小ネタを挟みながら放送をした。
「ただ今一階アパレルコーナーに新商品が到着しました! アルミニウムで作られたスーツケースなのですが、とにかくめちゃめちゃ頑丈で、当店勤務の北斗神拳伝承者にホアタしてもらったところ、傷一つ付けられなかったという逸話があります! スーツケースがベコンベコンで悲しい思いをしていらっしゃる方はぜひチェックしてみてください!」などと北斗二千年の歴史を脅かす放送でお客の興味を誘うと高額な商品でも売れることがあり、他には「雨が降ってきたので、一階レジ横に傘を死ぬほど出しました!! 予報ではこの後五時間は止まないようなので、お持ちでない方は絶対に買った方がいいですよ! 百円ですよ!」といったような放送をすれば面白いくらいに傘が売れる。捌きたい商品を面白おかしく放送することで、在庫を多少コントロール出来るのだ。
 私のように放送する人はほぼいなかったため、お客だけでなく従業員からも「さっきの面白かった」とよく声を掛けてもらえた。
 そのことですっかりと調子に乗った私はラジオ局にDJとして採用してくれと応募し、あっけなくお祈りされたという黒歴史がある。

 もう一つ面白かったのは、ポップ作成である。ポップとはスーパーなどでもよく見かける、値段や商品説明が書かれたポスターのことだ。社内には専属のポッパーが三人いたのだが、急ぎの物や依頼するほどでもないポップは手作りしていた。パソコンのポップ作成ソフトで印刷してラミネート加工をするのだが。これがじつに面白い。最近ネットでもよく見る「発注しすぎたので買ってください」といったようなおふざけポップを店内に配置しまくり、従業員間で大喜利大会のようになっていたこともあった。

 めちゃくちゃ忙しかったが、その分楽しかったドン・キホーテでのアルバイト。あれほど楽しみながら仕事をしていたことはあれ以来ないので、またあんな気持ちになれる日が来ればいいなと、私はそう思う。

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